吃音の子が安心できる学校づくり。子どもを守るためにできることは?

吃音

「うまく話せない」
それだけで、子どもが毎日つらい思いをしているとしたら、どう感じますか?

吃音は、ことばがつまったり、引き伸ばされたり、繰り返されたりする話し方のことです。本人の性格や努力不足ではなく、先天的な神経の特性によるものと考えられています。

でも学校という環境では、「話すこと」が求められる場面が多いです。音読、発表、スピーチ、自己紹介…。そんな中で、吃音のある子が話すたびにクスクス笑われたり、真似されたり、何気ない「指摘」に傷ついてしまうことも少なくありません。

そこで今回は「指摘」や「真似」や「笑い」といった吃音の子どもが学校で抱えるつらさに対して、どうすればよいのか考えるきっかけになれば幸いです。

吃音は「からかわれる子どもの問題」ではない

吃音のある子が困っているとき、「もっと練習すればいいのに」「焦らず話せばいいのに」といった声をかけたくなるかもしれません。

でも、それは違います。

吃音は、本人の努力だけでコントロールできるものではないのです。だからこそ、子ども自身を責めたり、無理に治そうとしたりするのではなく、周囲の理解と環境の工夫(合理的配慮)がとても大切になります。

教室で吃音の子を守るために先生にできること

もし、クラスの中で吃音のある子がからかわれたり、困っていたりする様子があったとき、先生からクラス全体に「吃音とは何か」「どう関わればいいのか」を説明してもらえると、とても心強いサポートになります。

例えばこんな説明が効果的です:

  • 吃音は病気ではないし、本人のせいでもない
  • 言葉がつかえることがあっても、それはわざとやっていることではない
  • からかったり真似をしたりすることは、本人をとても傷つける
  • ゆっくり話を聞いたり、途中で言葉を奪わないことが大事

こうした「クラスへの周知」があるだけでも、吃音のある子が少しずつ安心して学校生活を送れるようになると思います。

本読み・音読・スピーチ…吃音の子が乗り越えるための5つのコツ

話すことに苦手意識がある中でも、吃音のある子が「少しでもうまく話せた」「伝えられた」と思える経験を積むことは、自己肯定感の土台になります。

以下に、実際に効果的とされる話し方の工夫を5つ紹介します。

ただし、善意であっても、これらの方法を一方的に伝えることが、かえって本人をしんどくさせてしまう場合もあります。
子ども自身が「少しでも話しやすくなる方法が知りたい」と求めてきたときに、そっと教えてあげるくらいがちょうど良いかもしれません。

挿入(あのー、えっと…で助走をつける)

「えっと、ぼくが思うのは…」のように、言い出しにくいときにクッションになる言葉を入れる方法。緊張を和らげて、スムーズに話し出しやすくなります。

言い換え(つかえにくい言葉を避ける)

例えば「くりかえし」が言いにくいなら、「何度も言うこと」などに言い換えてみる。自分の話しやすい言葉を選ぶことで、伝える力を保つことができます。

助走(言いやすい前置きをつける)

「わたしは…」「それでですね…」など、言いやすい言葉を先に添えると、苦手な語の発音がしやすくなることがあります。

置き換え(言葉の順序を変える)

言いづらい単語を文の先頭に持ってこないようにし、話しやすい順番に言葉を並べ替える工夫です。たとえば「電車に乗った」ではなく「乗ったのは電車」という形にするなど。

随伴動作・リズムの活用

・膝をトントン叩く
・手を動かしながら話す
・リズムよく話す(メトロノームや歌うように)

こうした動きやリズムは、話すテンポを整える助けになります。

周りの理解が、子どもの力になる

吃音のある子は、「話すこと」への不安や怖さを日々感じながら、懸命に学校生活を送っています。

でも、本人を責めたり、無理に治そうとするよりも、周りのちょっとした理解や配慮が、何よりのサポートになるのです。

  • 吃音は「本人のせい」ではない
  • からかいや真似は、深く傷つける行為
  • 理解ある先生や友だちの存在が、安心の土台になる
  • 話し方の工夫は「努力」というより、「自分を守る手段」

ひとりでも多くの子が、「ことばがつまっても大丈夫」と思えるような教室になりますことを願っています。


参考リンク

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